蒲生邸事件 [読書]

  そこでは今も、佇むふきの髪に肩に、
  ふたりが初めて出会ったあの日、
  昭和十一年二月二十六日の雪が降りつもる。

美しく切ない。
そして重さも感じたラストの一文、ちょっと涙でた。


蒲生邸事件 (文春文庫)

蒲生邸事件 (文春文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2000/10
  • メディア: 文庫


日本SF賞を受賞した長編ですが、
私にはSF的側面よりも
歴史の重み、言い訳しない潔さが印象的でした。
私は、あの頃の日本人の生きかたが好きです。
まっすぐつらぬいてた。ちゃんと「公」があった。
ふきのちょっとした振舞、文机の様子にもこみあげてきました。
かわってはいけないもの、あると思った。

  そんなことを言うのはずるいですよ。
  「今カラデモ遅クナイカラ、原隊ヘ帰レ」
  孝史さんはね、あたしとは違う軍隊の兵隊さんなんですよ。
  それも新兵さんです。
  帰らなくちゃね。

  ふきが右手をあげて、敬礼をしてみせるのが見えた。
  手の甲がぴんと伸びた、きれいな敬礼だった。
  新兵さん、さよなら。


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